重力と重力

あまりにも重すぎる 

これ以上あるくには

 

この体は あまりにも重すぎる

目の前のフェンスをのぼるには

 

この足は あまりにも重すぎる

もう走れやしない

 

この手は あまりにも重すぎる

誰かの手をにぎるには

 

重すぎる体が

深い 柔らかな 真白な雪に沈んでいくことを

のぞむ

 

涙が落ちるより早く

深く つめたく

 

それはもう手に入らないことを知って

それがあることだけを知って

 

打ち上げられたロケットが

地球の重力を断ち切るとき それは幸福なのだろうか

 

時間 と距離と

もうそれはそれは

 

振り返るのは あなただけ

風がそよぐのは 向こうだけ

 

どこへ行く のか 重すぎる

 

地面に張り付く あの音は ほんとうになっていたのかな

あまりにも重すぎる どうじに軽すぎる 記憶と身体

浮かび しずみ 消えるまで