だれの手

だれの手もにぎることができない

にぎり返すことができない

 

だれかの手をあたためることなんてできない

 

だれもいない場所にむなしく手をのばし

どれほどの

 

とおく凍えているのでしょう

そうでなければ そうでないことを祈るばかりの

 

切れ間からでもひかりは差すでしょうか

いくつもの

 

きれいな氷を買うべきだった

 

からりからりと鳴っている

うつくしい曲線のガラス瓶

 

指先の感覚もうすれるころに

しかし街は楽し気だった

 

永い距離を隔てて手を伸ばす

猫はなにも言わず遠くへ行ってしまった

 

だれの手をにぎることもない

届くこともない

 

それは悲しみより

ただしずかにたたずむ憎悪でしかなった

 

うすい氷がわれるように

 

ただ1枚の白い紙になにを

 

だれに届くでもない手をもがき

のばす