あなた

泣かないで あなた

知っています あなたと似た くるしみを 

わたしが 知っていても なんの救いにもならないこと

 

泣かないで あなた

知っています 呼吸をつづけるだけで 踏みつけてしまうすべてを

あなたが どれほど長い間 嘆いていたか

 

泣かないで あなた

知っています どんな言葉も むなしいだけだと

届くことがないのだと

それでも わたしは

あなたは ここにいていいのだと 言いつづけます

 

泣かないで あなた

知っています ほんとうのおわりが どれほど素晴らしいのかを

知っています 傷ついた裸足に 吹く風が あたえる痛みだけが 

ほんのすこしあなたをかるくすることを

 

泣かないで あなた

知っています こんなにたくさん人がいるのに 誰とも分かりあえないという諦めを

知っています 目を 耳を ふさいで さけびだしたい衝動を

 

どうか 泣かないで あなた

千切れて バラバラになった 

まだわずかに キラキラとした それを

抱えて泣く あなた

 

どうか どうか