なんとなくの日々

ふと思う。みんなしんどくないのかな、と。

生きていくこと、あまりにしんどくないか。

 

生きていくにはお金を稼がなきゃいけない。

自分が無能で社会に上手く適合できないのだとしても

あるいは精神に障害があったのだとしても、

お金だけはなんとかしなくてはいけない。

 

薬を飲んだりムリヤリ自分を啓発して奮い立たせて、

疲れのとれない体で満員電車に乗り込み会社へ行く。

心ない経営者や上司と折り合いを付け

なるべく波風をたてないよう円滑にコミュニケーションをとり、

したくもない笑顔を貼り付けて夜遅くまで労働をする。

疲弊し帰宅したあとには自分の時間を楽しむ時間もエネルギーもない。

せいぜい酒に逃げるくらいしか自分を慰める術がない。

立派な大人。

 

それほど人生を切り売りしても手にする給料もわずか。

昇給もたいしてのぞめない。人生のお値段。

それでも平均的な日本人におさまるには

良好な人間関係を保つための努力をし

パートナーを捜し家庭をもち子どもを育て

老後の備えもしなければならない。

立派な大人。

 

ああ。

 

自分の無能さや不器用さをどんなに思い知っても

逃げ場はない、己の足場を崩すわけにもいかない。

誰かに攻撃されるくらいなら、攻撃する側でいるほうが楽だ。

立派な大人。

 

テレビをつける。ネットをみる。

災害、過労自殺、通り魔、子どもへの虐待。

不条理な死。

経営者たちが発する無能は淘汰されるべきと言う力強いメッセージ。

弱者は死ね。弱者は死ね。

あらゆる対立軸で巻き起こる啀み合い。

男はクソ。女はクソ。老人はクソ。オタクはクソ。日本はクソ。

訳知り顔のコメンテーター。

飯や商品を紹介するだけで莫大な金をもらう芸能人。

まあこわい。まあすごい。まあ美味しい。

 

ああ。

 

…それで?

  

物語の中ならいつか決着や区切りがつくのだろうが

現実にはそうはいかず、長く生きれば生きるほど

消化できない出来事やぐちゃぐちゃとした

名前のない感情がふりつもっていく。

 

なんとなくまだ今日は続いている。

なんの解決もないまま。

 

きっとこの世にあるであろう幸せにたどり着くことは

針の穴にこの身をとおすよりむずかしい。

わずかばかりのいくらかマシなものを集める。

それが?

 

悟り切った態度を取るか、

あるいは麻痺してしまうのがいい。それがいい。

だけれどそう言ってみたところでどうしようもない。

 

みんなはしんどくないのかな。

おれはしんどい。ひたすらにしんどい。