ふたがあく

ふたがあく

望みもしないのに その中身を

見なくちゃならない

 

ふたがあく

わかっていたのに その中身を

手に取らなくちゃならない

 

電子音がひびく なかったことにならないか

人がひとりいなくなるたびに

少しくらいの きせきをのこせたらよかったのに

 

もっと せめて

もう少し高いところへ

もっと いっそ

低いところへ

静かにしているように言われて

どうしてしまおう

 

錆ついてしまったのをしっているか

 

今日も老人は杖をついて歩く

 

ふたがあく

じゃあやさしくなれるのかい

我先にとうばうのかい