美しい時間
おれの人生はそのほとんどが惨めなだけの時間だった。
これからなにか素晴らしい時間があったとしても
それは長い人生の中の慰みでしかない。
惨めな時間が報われるようなことはない。
それに対して不平を言う気分ではない、
いや生きていくことはそういう程度のものだろう。
ある人は生きるに値する幸せをすんなりと見いだす。
そうではない人はせいぜい出会ったいくつかの幸福を
何度も味のしないガムのように歯牙んで生きていくだけなんだろう。
歯牙んで、とシガーって似てるね。
おれが19歳のころ、生きていてもいいのかもしれないと
思えるような時間が少しだけあった。
今はそんな気分はないけど、
あのとき幻想だとしても感じた美しい時間を
反芻してなんとか生きている。
歯牙んで生きてる。
それは虚しいこと。
悲しいこと。
ああ、どうしようもないね。
残りカスのような、
シケモクのような人生。
それであとどれくらいいけるかな。
そんな遠くまではいけないな。
美しい時間がみんなにおとずれますように。
長く長く生きるに値する日々をみんなが見つけますように。
出会いますように。