目を閉じるとチカチカと見えるのだった

ああ、あれは曼荼羅だと思った

古い記憶を見るのだった 覚えていない記憶だった

何度回った

懐かしくもない 悲しくもない

左手を握りしめた

せまい場所に閉じこめられた犬を見た

古い土の壁だった

指をならし駆け下りて ほんとうは泣きたいのだった

なにも なにも

大声で泣きたいのだった

それすら許されないせかいで

軽いとびらを開ける

それは終わったのだ 終わったのだと言いきかせる

なおも

チカチカと回り消え またあらわれ

その先を見るか

もう見たくないのか

いずれ見るのか そこへ行くのか

つめたい空気がながれて

階段はきしむ

すべてはやさしく むなしい

泣いている 泣いていない

チカチカ

チカチカ